世界を見るということ

弓の話である。 先日稽古をしている時、立ちで入ることがあった。 私の後ろにまだ弓道歴の浅い、それでいて真面目に練習に来ている人が引いていた。 座射で入るわけであるからそれは一つの儀式なのであるが、その人は飛ばした矢が二本とも的に届かず、 二回…

酔いどれた19歳

先日地元に帰っていて年始だったから行きつけの飲み屋も大抵閉まっていた。 あてどなく近所の人気のない商店街を歩いていると元日の夜にも関わらず開いているBARがあった。 前々から気になっていたが、若干オーセンティックな感じがして少し躊躇していた店だ…

訃報に接して

はじめに断っておくけど、身内が死んだわけではない。 加藤治子さんが逝去したというニュースを聞いて色々考えていた。 近年誰かが死んで一番衝撃的だったのは1位丸谷才一、2位高峰秀子だった。 これは息が止まるほどの衝撃だった。 丸谷才一はエッセイ集を…

雑記

1.いい男にはいい影がつく。 先日オペラ歌手と話していた時、全盛期は40代を越えてからという話を聞いた。 まあ、スポーツ選手のように体をバリバリ使うわけではないからそういうものかもしれない。 いわく、人生の経験が声に出るから深みが出るという話であ…

佛と弓と教養と

最近くずし字を勉強している。 よく弓の世界では仏の旧字体である「佛」を持って次のように言うことがある。 菩薩は弓と二本の縦棒、つまり一手の矢を携えている。 だからホトケ様は弓を引いているのだ。 それに愛染明王は弓を持っているだろう、と。 これは…

婿探し

つい先日の話だが、休日家にいたらピンポンとインターホンを押す音が。 家に突然やってくる人にあんまりいいことはないのだが、 案の定その前日のエホバの証人に次いで玄関を開けたらあまり面識のない近所の人が。 それだけならいいのだが、なんの脈絡もなく…

弓の少し抽象的な話

よく弓の引き方を根本から間違えているのではないかと思うことがある。 道場で引いている人たちがスマホで射形を撮影してもらっているのを見るが、 あれは信じられないような勇気であるし、蛮勇とさえ言える。 昔自分の声が録音されたテープをたまたま聞かさ…

捕まって。。。

http://www.huffingtonpost.com/2015/04/12/tetsuya-fukuda-train-masturbator_n_7049410.html こういう場合、日本のマスコミは婉曲的に物事を伝えようとする。 しかしハフポストの見出しが以下の通り直球で物事を伝えているのは、 ジャーナリズムの精神とい…

ひさびさに色々と。

もうこのブログも十年続けている。 最初に始めた時はヤフーブログが始まったばかりで、一度アップロードボタンを押した記事がなかなか実際にはアップロードされず、仕舞にはタイムアウトになり何時間もかけて書いた記事が泡と消えたことも多くあったように思…

恋心

或る知った女にたまさか会うことがあった。 およそ三年ぶりである。 実を言うとその女を好いていた気持ちも不埒ながらあったのではあるが、 種を明かせば向こうは夜の女。 われわれが昼間に活動している時間でも、彼の女は朝に寝て夕暮れに起きる生活を続け…

ニュース小咄-英語教員はTOEIC受験を 和歌山の公立中学・高校-

NHKニュースより転載 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150122/k10014883911000.html 英語教員はTOEIC受験を 和歌山の公立中学・高校 和歌山県教育委員会は、英語の教員の指導力を高めるため、公立の中学校と高校で英語を担当するすべての教員に国際…

CMと集中力

今月号の文藝春秋では高倉健の追悼特集が組まれている。 なかでもノンフィクション作家の沢木耕太郎の文章が面白かった。 かつて沢木はモハメド・アリの世界戦を、クアラルンプール、マニラ、ニューオーリンズと国々に観戦して回った。 そして今から30年ほ…

矢束

さいきん2117の矢を新調したら、以前の矢と比べてやたら長く感じられた。 前の六矢は鏃を切り詰めて一度交換しているから、当然かとも思いきや、 弓具屋で矢束を図ったら、93センチもあった。 以前は腕を伸ばしに伸ばして91センチだったのだから、こ…

赤穂探訪1

赤穂といえば、忠臣蔵や名産の塩。 そこに加えて、雲火焼き、関電の大工場などを思い付く人がいればなかなかの「赤穂通」だろう。 先日縁があり赤穂に行くことがあった。 昼に播州赤穂駅に到着して、駅構内の観光協会でレンタサイクルを借りて市内をぐるり回…

役得

高校生のときは生徒会に所属していた。 部活動もやりながらで中々に忙しく充実した時間を過ごしたものだと思う。 一年生の秋口に生徒会の会計監査になり、そして春休みを迎え、休みの最後の日は用事があり三階の生徒会室に詰めていた。 部活をできずに悶々と…

雑感

iPhone4Sのスリープボタンが壊れて、液晶のバックライトが全消灯して、 電池の減りが極端に早くなった。 三重苦であるが、修理するには1万円以上かかるようなので、部品を注文して自分で直してみた。 ネットを漁ると意外にも自力で修理している人が多かっ…

ノート:森田療法

・森田療法は認知行動療法と混同されている。 しばしば混同されることの多い両者の大きな違いは、 前者が患者のトラウマをなるべく遠くに置こうとする一方で、 後者はトラウマと正面から向き合うことで治療を試みるというところである。 患者が過去の経験を…

命名

文章を書くときによく題名を後付にすることがある。 適当に文章を書き流して自由勝手に完成させた上で、「この文章には~と命名しよう」という態度である。 近代社会でもっとも私たちと馴染みがないものの一つが「命名をする」という行為だが、 たとえば自分…

捨てられた本

マンションのゴミ捨て場に大袋が三つ捨ててあった。 中を見ると大量の本が中に入っていた。 推理小説、少女漫画、健康に関する本、 きっと捨てた人は女性だったのだろう。 なぜその人は古本屋に持っていかず本をゴミ捨て場に置いていったのだろうか。 勝手な…

ダブルシャフト

ご無沙汰してます。 相変わらず週三、四の弓の練習は欠かしません。 一年くらいまえにイーストンの2117シャフトに1913シャフトをつっこんだ 「ダブルシャフト」なる矢を購入して、以来ずっと使わないままだった(笑) 一度引いたときに、的に届かなかったた…

「初級者」と呼ばれて

私は弓道二段を所持している。 弓の段位の高い低いはある程度その人の実力を証明する免許みたいなものである。 ことは、私が所属する自治体の弓連の会長さんがたまたま道場に来た時の話である。 会長さんがご丁寧に教えてくれるのだが、やたら「初級の頃は、…

団藤重光死去

赤門の近くのある団藤先生の家にお邪魔して、そこから上智大学での講演会にお供したことがある。 先生は腰が悪かったので、大学の前につくとすぐに車いすにお乗り頂き、 それを押したのが懐かしい。 かれこれ六年前の話である。 家の玄関先では奥様がお見送…

梅雨

梅雨入りした。 弓にとって大敵である湿気の到来である。 湿度計が常に100%を行ったり来たりしている。 新弓は使えないし、枯れた弓を出して使うことにした。 どうにも秋口くらいには冴えない弓だと思っていたやつも、 こうして水気を吸収すると往時の潤い…

序文

小説家がもっとも表現に窮するのが序文であるという。 いうなれば第一声になにを持ってこようか思案する演説家と同じ悩みをかかえているのである。 まっ、そんなことはどうでもいいが。 今日も弓の話題。 さいきんスラムダンクを読み返した。 完全版だったの…

三人

ひさしぶりに弓の試合に出た。 三人一組の団体戦で、一二射×三人、計三六本の勝負である。 かれこれ一月ほど三人で練習を重ねたが、これが見事に失敗の連続である。 どうやっても一二分の七本が最高なのである。 三人の意識には同様の停滞感が流れていた。 …

授業

ひょんな機縁から大学で授業をすることになった。 二回だけだけどね。 近代の病理を説明するというもので、二週にわたり病人の誕生や医原病などをテーマにお送りした。 準備に何十時間とかけたんだが、いざ教壇に立つとあっさりと予定していた内容が終わって…

おじの病

おじさんが胃がんで胃の三分の二を切除したと母から連絡があった。 ブログには楽しいことばかり書きたいが現実はそうもいかない。 おれも胃酸を抑える薬を服用しているから無縁ではないし、 看護師をやっている母はうちはがん家系ではないと信じていたからな…

四階のデヴィッド・ボーイ

マンションの六階に住んでいる。 ある日エレベーターで下に降りていると四階で一度停まり、 サングラスをしたきゃしゃなおじさんが乗り込んできた。 香水の匂いをぷんぷんとさせ、よほど直毛なのか長い聳えた角刈りに、 薄手のスーツに色気たっぷりの黒ネク…

アッティラと名前

さいきん知り合った人と友達の彼女の名前が一字違いでよく間違えて呼んでしまう。 間違ったのを悟られまいとするから、 「○ちゃん…(あっ、間違えた)、えーと、○○さん」と言い直すことが三回くらいあった。 その彼氏もさいきんできた知り合いと友達で、三人…

メンヘラとは

最近メンヘラってよく言いますよね。 メンタルヘルスをやんでいる人のことらしい。 この不確実性の時代に生きていると、たとえば明日テロで死ぬかも知れない、 歩道を歩いているのに自動車がつっこんできて死ぬかも知れない、とか色々想像することがある。 …