「初級者」と呼ばれて

私は弓道二段を所持している。

弓の段位の高い低いはある程度その人の実力を証明する免許みたいなものである。

ことは、私が所属する自治体の弓連の会長さんがたまたま道場に来た時の話である。

会長さんがご丁寧に教えてくれるのだが、やたら「初級の頃は、どんっと大きく離すのがいい」

と誰彼かまわずおっしゃる。

ためしにやってみたが、矢が的にとどかなかった。

「そうだ、それでいい」と言われたのだから白も黒になるのだろうが、

問題だったのは「初級者」とひたすら連呼されていた相手に私だけでなく、

五段を所持している私の先輩も含まれていたことである。

会長には五段の先輩を鼓舞する意図があったと思いたいが、私はその光景を目の当たりにした瞬間、

幾年にもわたり全国の試合で我が地域が結果を残せていない理由を感じたような気がした。

細やかな配慮ができないトップのもとに人材は集まらないだろう。

弓道は武道であるが、柔道や剣道などにくらべ競技人口は少なく、

なかばアマチュアスポーツのようなものである。

現代で弓を引いて金を得るのは、ごく一部の研究業や監督業の人などを除けばいないのではないか。

命がけで弓を引くのも大して益のないことである。

だからといって、

ある程度の段位を持っている人を初級者呼ばわりして、

その人の顔を潰すような扱いをするリーダーに従うのも気分のいいものではない。

初級者である自分が非難されたわけではないが、

全国区の弓引きは私生活を犠牲にして仕事場で後ろ指を指されても弓を引くのだから、

その一員である先輩を初級者呼ばわりして欲しくはない、

と傲慢にも思ってしまった。