婿探し
つい先日の話だが、休日家にいたらピンポンとインターホンを押す音が。
家に突然やってくる人にあんまりいいことはないのだが、
案の定その前日のエホバの証人に次いで玄関を開けたらあまり面識のない近所の人が。
それだけならいいのだが、なんの脈絡もなくやってくるのは怪しいこと極まりない。
何の話をするのかと思えば、プライベートな話だからとりあえず玄関にあげてくれないかという。
口ぶりは非常に慇懃丁寧なのだが、突然家に来て、とつぜん話をするのであるから何が丁寧なのかと思うが、そういう趣を介さないことがそもそも無礼なのである。
聞けば、婿探しているという。
お嫁探しではなく、お婿さんをさがしているのである。
その慇懃丁寧なる口ぶりを聞いていると、近所のとある家のご令嬢が未婚でありその家は娘ばかりの家だから跡継ぎがいない。
そして長女が嫁に出て、次女が残っており、父親は非常に思案している。
このままでは家は途絶える、というところまで聞いて、ああこれは結婚のご提案なのであるのだとわかった。
さんざん最近そういう話ばかり持ちかけられて、好きな人など自分でみつけるとぞんざいで思っている私からすると、またか、とうんざりする類の話である。
相手の女性はわたしよりも一回り以上の年下であるから、きっと話も噛み合わず、その年頃の娘なら他にいくらでも貰い手があるであろうから他を当たって欲しい。
という話ではなく、まずそれは一回り以上年上の娘なのである。
かなり真に迫った感じで来られたから年齢のことはさておき、相手の写真とか、職業とか少しは個人に関するものを見せてもらえるのかといえば、そうではない。
非常にいい可愛い娘さんがいて、学歴もしっかりしていて、気立てもよく、というような抽象的な話しかその自称月下氷人はしないのである。
名前すら知らないその娘が今まで結婚しなかった理由はわからないが、まわりがそんな体たらくであるから結婚を助けられないのである。
すべては休日の昼間に唐突に人の家に婿探しにやって来るということに集約される。
その場その場で丁寧に接し、とりあえず針にかかったらよし、という態度なのであろう。
久しぶりにこの上なく雑なことを見た気がする。