2008-01-01から1年間の記事一覧

文語文

丸谷才一の文章は歴史的仮名遣いを用いたものだが、これには最大の弱点がある。 口語文、という点だ。 丸谷才一の文章がもしも文語文ならば、歴史的仮名遣いも活きるはずだか、 たとえば丸谷のエッセイの仮名遣いを現代仮名遣いにおろしたとしても、 大した…

Kessinger Publication

Kessinger Pub.とは、希少本の再販を行っている版元で、 Froudeのカーライル伝やTindalの教会批判書もこの出版社から入手できる。 しかしときには何百年前の原本をフォトコピーしたものをそのまま印刷した体(てい)で発刊するので、 あまりにも読みづらいと…

隣の住人

私は団地に住んでいる。 約一年半この十四階建ての集合住宅に住んでいるが、 さきほど初めて隣の部屋の住人を目撃した。 男性だった。 町内会の付き合いで挨拶を交わす団地の住民はいるが、 居住者の大半はこれに出席しないため多くは他人に等しい存在である…

なんともはや

大学院に落ちてしまった。 落第、秋口にはさむざむしいほど悲愴な響き。 実りある秋旅行の計画が烏有に帰す。 なんともはや困ったことになった。 とともに、冬を乗り越えるだけの活力を得た気がする。 今やっと長い眠りから醒めたような気さえする。 雪解け…

静寂

ここ十日ほどの期間は、過去一年半ほどのうちで、おそらくもっとも静かなひとときである。 とりたてて用事はなく、だからといって暇つぶしをする気もせず。 嵐の前の静けさというよりも、 浮雲に乗せられてどこか不案内な何処へと運ばれていくようなところに…

真理が女の狂想曲

もしも真理が女だとしたら、哲学者はみな戦々恐々とするはず。 なぜか。 童貞の哲学者にしてみたら、その真理は死刑宣告にも等しいからだ。 つまり両手に花のニーチェに、「女とも寝たことのないやつが、真理の追求とはね、ふふ。ねえ君、知っているかい、真…

近所の八百屋-結婚について-

いつもひいきにしている八百屋が近隣にある。 これに関して前から気になっていたことがひとつあって、 もう一年近い付き合いになるこの八百屋さんが、 いつもやけにたくさんの野菜をすすめてくるのだ。 会計をする折には毎回のように、 「今日のさつまいもは…

Masachi Osawa と Keishi Saeki

京大で佐伯啓思と大澤真幸に会う。 院の面接においてですが。 当代一流の学者ふたりと二言三言交わしただけで、満足。 次元の違いを周囲に思い知らしめるには十分すぎるほど博識。 話に出てくる学者が広範囲。 大澤真幸は田村正和似。

無邪気な哲学者

アキレスと亀を上手に説明するにはどうしたらよいだろう。 もしも中学生かその年回りの子どもに説明するとすれば、 これは大変に骨の折れる話である。 形而上学、アリストテレス、論理学、命題、そういったこととは全く接触をもたない、 いわば哲学的に無垢…

レヴィナスなら顔、 大澤真幸なら手、 ゲーテなら色彩、 しかし匂いを哲学的に研究した人はゐるのだろうか。 多くの場合、記憶や詩的なものに関連付けられて論じられる「匂い」というもの。 いってみればそれはあくまでも彩りの一つでしかなく、 色ではあれ…

Holbein in England

マニエリスム、とは? の問いを明確化するために ホルバイン展のカタログを購入する。 約700円なり。 なかなか面白い。

アマゾン

最近はamazon.com(日本のアマゾンにあらず)で本を漁るのが余暇の過ごし方である。 海外から洋書をとり寄せる方が日本国内で購入するよりも安く済むことがあるからだ。 試しにGREAT BOOKS OF THE WESTERN WORLDの旧版中古本を注文する。 送料は10$。 USPSで…

散文

ヘルダーリンがその後半生を著しく精神を病んで過ごした一方で、 詩を読めばヘルダーリンの倍に病んでいると思わざる負えないボードレールが、死の一年前くらいまでそこそこ健全に人生を過ごせたのは不思議である。 なぜだろう。 ヘルダーリン全集が欲しい。…

達筆 2

悪筆や達筆などで封書の宛名が判読できないときは、 送り主に連絡するそうです。 出典:近所の郵便局のおねえさん 合理的、あまりにも合理的な

シンボル

カッシーラー的な意味でのシンボルの彼方に、 つまりあらゆるもののうわべを超えた先にある真の実像を、 ほんとうに見定めることが可能なのだろうか。 表象から女を女と判断している時点で、それは真に女ではなく、 あるいはそれが実は女装した男であっても…

達筆

諸橋轍次の直筆書簡を見た。 達筆で読めない。 達筆なのと、字が汚いのは区別がつくのに、 達筆すぎて判読できないのはくやしいではないか。 ところで、達筆や悪筆で住所が特定できない場合、郵便局ではどうしているのだろう。 判読の専門家がいるものなのか…

生もの 2

最近の小生の文章には、それほど悪くないものがわずかにある。 次の日の無添加食品のように、昨日は健全にみえた代物が今日には腐っている、 ということばかりではないようだ。 だからといって文章に食品添加物が入っているわけではないよ。 パンが添加物に…

最近体力がついた、とジョギングをしながら感じ、 調子に乗って飛ばしていると十キロ地点でピキっと腰に痛みが走る。 とたんにその場の、夜中の商店街の真ん中でしゃがみこんでしまう。 基幹部を痛めるとはこういうことか。 一瞬で五十歳ほど老けた腰でよぼ…

今日の事実

かさむ本代と腰痛。 癒されない睡眠とコーヒー。 心地よくない陽の光とマラソン。 痛む胃と空の冷蔵庫。 減る体重と夏バテ。 重い瞼と浅き夢。 震える手と何かを掴もうとする握力。 何かの匂いと鼻詰まり。

散文

散歩中、神社の境内に子猫を四匹みつける。 人間の赤子でも子犬でも小さい頃はかわいいものであるし、 幼さが邪気のなさと罪のない空白さを見せつけ、 大人たちはそれに魅了され、 止まって観察していると子猫がにっこりと笑いかけてくる、 というわけではな…

ビアス

ビアスの悪魔の辞典に触発され、ここに同様のことを書いてみる。 若さ 碌にまぶしくもないのにサングラスをかけること。 コーヒー 最初はほんの眠気覚ましのつもりが、次第に人間を虜にする黒胆汁。 雷 フランクリン以降もはや超自然的な意味合いを失い、年…

自意識過剰なぼく

銭湯でも、ジョイントでも、カフェでも、 からんでくる彼ら。 柘榴口をくぐらずとも、最近は図書館で目が合う。 意識的に合わせてくるのか、たまたま合うだけか。 人は外見によらず、目もまた時として真実を語らず。 好奇の目にも見えるものがはたして本当に…

TBSブリタニカ

事典が面白い。 オープンソース型web事典の比ではない。 平凡社がいまも百科事典を刊行し続けるのは人類の知にとって正しい行いといえる。 来月受験なのも忘れ、種々の知へと脱線を続ける毎日。 鏡花の高野聖の如く蛇の道に迷い込むことの神秘さ。

ロマ人

近所のスーパーで買い物をしていた時、家族連れの外国人とすれちがう。 彼らの浅黒い肌、カールのかかった癖っ毛、中東の手前ら辺の人たちか。 このあたりの外国人居住者分布から考えればインド人とみるのが最も相当だが、 しかしそれに加えて、太い眉、濃い…

孤独

孤独を愛すると自分の影にすら目もくれなくなる。 孤独の極みの中で、自分自身が闇に埋没してしまう感覚に陥ってなお、 自分の影を見ず、 あるいは鏡に映る姿を振り向かずにいられるだろうか。 不安に切り刻まれた心は、 いま再び闇に光を当てるだけの輝きを…

容貌

高校の同級生と先輩に遇う。 彼らとの何年振りかの再開の第一声が、まったく変わっていないな、であった。 小生は年相応に見られないことのほうが総じて多い。 碌に言葉も交わさないうちの挨拶がそれであるから、 それは小生の外見においての変化がない、と…

事典

あれほど買わないと言ったのに、 ふたたび事典を買ってしまう。 しかし送料込みで五千円弱なら安いです。 でも重量が計100kgあるそうです。 床が抜けそうです。 幕下一人分の重さにきしむ構造住宅。 みしし。

マルドロールの歌

「彼の席は、もはやずっと前から定められていて、 そこには鉄の絞首台が備えられ、鎖と鉄の軛がぶらさがっている。 宿命が彼をそこに連れてゆく時、じょうご型の不吉な穴は、始めて、 いまだかつてしらなかった美味しい餌食を味わうことだろう、 また彼も、…

生もの

自分がしたためた文章を一晩経ってから読み返すと、 なんとつまらないものをお前は書いているのだ、としばしば思う。 昨日の魔法が朝日にかかり解けたように、 翌日の文書は一瞥にして単語の集塊に還元される。 では昨夜おぼえた魅力はなんだったのか。 あの…

魚の涙

昔の人はこう考えたかもしれない。 魚も涙をするのでは、と。 金魚鉢の金魚も水中にいるため、もし涙を流してもヒトはそれに気がつかず、 あるいは陸揚げされた秋刀魚も、すでに死んでいるため涙を見せることはない。 もしも生きているうちに、目の前の人に…