梅雨
梅雨入りした。
弓にとって大敵である湿気の到来である。
湿度計が常に100%を行ったり来たりしている。
新弓は使えないし、枯れた弓を出して使うことにした。
どうにも秋口くらいには冴えない弓だと思っていたやつも、
こうして水気を吸収すると往時の潤いを回復するから梅雨どきの弓は面白い。
もともとは漆をふいた塗り弓を使用するのだろうが、
そういう弓人もそうそう見ない。
もともと真っ直ぐな竹を無理やり曲げて弓なりにするわけだから、
水気を吸うと弓は生まれたままの姿に戻ろうとするのだろう。
もってくれよ、と念じながら一射一射をかさねていく。
(弦音も鈍くなるのだが、それは射手の手の内の不正のせいである。)
乾燥している時期に比べて、矢飛びもすこし変わる。
的に喰いかかるような飛びを見せていたのが、糸を引くような静かな軌道を描く。
降る雨のなかそうした矢飛びを見ているとあらためて季節を感じる。
それがいいとか悪いとかいう話ではないのだが、
友などはどうしてもそういう変化が気にくわないらしく、合成弓ばかり引いている。
梅雨の竹弓だからといって、まさか的に届かないわけでもあるまいし、
それほど目くじらを立てることでもないとも思うが。