魚の涙

昔の人はこう考えたかもしれない。

魚も涙をするのでは、と。

金魚鉢の金魚も水中にいるため、もし涙を流してもヒトはそれに気がつかず、

あるいは陸揚げされた秋刀魚も、すでに死んでいるため涙を見せることはない。

もしも生きているうちに、目の前の人にすら知られえない涙を流したとしたら、

その魚の涙ははたして悲しむべきものなのだろうか。




枯魚河過泣 何時悔復及

(魚は干物となって昔日の河に泣く、いつか後悔してもそれはすでに及ばないこと)

干された魚は悲しくとも涙を流すことができず、

生きている魚の目はつねに河の流れに洗われる。

流しえない魚の涙は、存在しえないことの悲しみ。