レヴィナスなら顔、

大澤真幸なら手、

ゲーテなら色彩、

しかし匂いを哲学的に研究した人はゐるのだろうか。

多くの場合、記憶や詩的なものに関連付けられて論じられる「匂い」というもの。

いってみればそれはあくまでも彩りの一つでしかなく、

色ではあれども単色の絵の具のようなもので、

色彩豊かにこれを論じるということは不可能に近い。

視覚で判別できるものが五万の色や物的なもの、無際限なものの一方で、

鼻腔は非常に小さな空間、小さな廣がりしか持たず、

ここで捉えることができるものは「単色」と形容するに相応しい。