弓の都々逸

誰が言ったか知らないが三大稽古の弓修行、

 
見取り稽古に数稽古、工夫稽古は最後の砦。
 
数稽古なら馬鹿でもできる、見取り稽古は赤子でも。
 
工夫するには頭を使う、使う頭を間違えりゃ、道と称する下手修行。
 
結婚詐欺では女が泣くが、自分を騙して泣くのは弓。
 
おとがめなしが玉に瑕、下手な弓なら犬も食わない。
 
盛った犬なら上手な弓に、難癖つけに吠え上がる。
 
相手にされないなまくらは、矢場のすみにて弦をば鳴らす。
 
冴えた弓なら窓辺でも耳も視線も集めるが、
 
されどこの手は不器用で、まっすぐ飛ぶ矢は土を打つ。
 
過日は誰かの手の内が手本手本とささやく声に、
 
われのことかと思いきや、どいつの弓矢も土を打つ。
 
どうやらモデルも真似っ子も別け隔てなく下手っぴだ。
 
俺だから下手の弓好き、そろいそろって日陰者。
 
日陰者にゃ流儀があって、下手くそなりに沈黙を、
 
守り互いの領分に、茶々を入れない足軽礼儀。
 
にこにこしながら弓を引き、おためごかしに褒めそやし、
 
そりゃ上辺の間柄、下手くそなりの論理では、
 
弓は静かに引くもんだ、人を見るならこっそりと。
 
俺にゃ中る矢がねえし、明日も安土に射ってみる。
 
後から的をかけてみて、紙をやぶった矢の数で、天狗になって高枕。