小説

なんとなく書いてみる

プロコフィエフのソナタを聞くと、天蓋のない原色の世界で、 彷徨するような奇妙な感覚をおぼえる。 何ら形而上学を旅する感性をもたない卑小な身にありながら、遠い世界のどこかに、 これに類似する地平があることをおぼろげに信じている。 ただひらすら想…

現代版ドンキホーテ 第二話

Aとヒロシはコンビニにいた。 道中、突然のどがカラカラに渇いたとヒロシがわめきはじめて、二人は近くのコンビニに入った。 ヒロシを最初無視していたAだったが、だんだん空っぽのブリキ箱に小石を入れたようなうるささに、Aは観念したのだった。 中に入…

現代版ドンキホーテ

ヒロシの彼女が連れ去られたと聞いて、Aが彼の家に駆けつけたときにはヒロシは台所の隅にうずくまってしくしくと泣いていた。 「彼女が連れ去られたって、いったいどこへ?」 ヒロシは顔ばかりはいやにデカく脂ぎっているのに、おんなおんなしい男で、この…

日本文学の先生

今年度から日本文学の授業を大学でとっているのだが、その先生のことが好きでたまらない。 好きになったのは性愛や恋愛の対象としてみているからではなく、その先生がかもし出すほんわかとしてオーラがこの数年授業中に寝たことがなかった私をうとうととさせ…