日本文学の先生

今年度から日本文学の授業を大学でとっているのだが、その先生のことが好きでたまらない。

好きになったのは性愛や恋愛の対象としてみているからではなく、その先生がかもし出すほんわかとしてオーラがこの数年授業中に寝たことがなかった私をうとうととさせられたからである。

ちなみに授業が楽しいわけではない。日本文学でありながら、年間の講義はすべて万葉集ひとつに絞り込まれている。講義が始まり1000年以上前の太古の旅へと出発するに伴い、聴講している生徒は例外なく睡魔に襲われ脱落していく。

私が好きなのは、万葉集を関西弁のイントネーションでとつとつと春雨の降るように語る先生の声に含まれる独特の艶と、窓の外を見るのでもない誰か特定の生徒を見つめているわけでもない、どこか遠くを見る目でやさしい笑みを浮かべるその顔である。

先生のことを美人と形容する人はおそらくいないだろう。顔が美しいわけではない。魅力的な体をしているわけでもない。低い鼻は日本人そのものであり、背が低くずんぐりとした体格だ。しかしその姿が愛しくてたまらないのである。

どうやら先生の出すオーラに私は魅了されたようだ。
そして彼女に会って私は初めて関西弁をすてきだと思った。