司書

渡辺崋山

先日、その四字が読めなかった司書に唖然とするも、

これならば浅学な吾人でも、容易になれよう職だといふ思ひが一寸心をよぎる。

他人の無知を責めるには謂なくも、

彼の司書の無知は元来、司書職に知識が必要とされない証左であろうか。

安きは月俸だけに終止せず、とは賤しいことなり。

その司書になろうと欲するparadoxが胸奥に展開することも捨て置きならず、

解決を要する矛盾である。