ちょんの間

大阪の淡路駅で下鉄堺筋線に乗り換え動物園前で下車。

そこから南に10分ほど歩くと「飛田新地料理組合」の看板が立つ。

その通りから路地へと入っていくと、いわゆる「ちょんの間」があるらしい。

ちょっとあいだSexして帰る間のことである。

すこし前までは川崎や京都五条にもおなじようなちょんの間が存在したらしいが、

旧赤線地帯がのきなみ一掃されている今でも、飛田新地は旧世紀の遊郭として現代に残っている。

ちょんの間がある通りの両サイドには2階建ての日本家屋が並び、玄関が大きく開かれ、

スポットライトを浴びて紗がかかった女の人が座布団にちょこんと坐って道行く男たちに手を振る。

横にいる女将さんが「おにいさん、この子見たってや」とよびかけ、

気に入った女の人がいればそのお店に入っていくというシステムである。

客は2階の座敷に通されことに及ぶらしいが、そのあいだ玄関には別の女の人が入れ替わりで坐り、

およそ3人ほどで店を回しているらしい。

週末に盛況するのはいわずもがなだが、平日の場合は女の人が一人しか詰めていない店もあるらしい。

飛田新地のなかでも最もきらびやかなエリアは青春通りと呼ばれ、

知り合いの京都人曰く「祇園のトップクラスの女が並んでいる」そうだ。

こうしたちょんの間は本番ありの風俗と似ているが、

通りから女の顔が見られるということや料金が一律11000円という辺りがなんとも古風。

ただ、15分でそれだけのお値段がするので、あまり尺は長くなく、

それにあまり遊んだ気もしないので、ちょんの間に2回寄って帰る人もあるそうだ。

客はことが終わった後にアメ玉を渡され、それを舐めながら道を歩くと、

「今日はもうあそびました」という合図になり、道々声をかけられることはなくなるそうだ。

飛田新地=本番、という管理売春があきらかなところだからいつまで存在しているかは不明。

あくまで本音と建て前のうち世間に開かれている部分が違うだけの話だと思うけれど。

ちなみに、女性は飛田新地を歩いてはいけないという暗黙の了解があり、それに冷やかし丸出しなので

そのうち無くなるかもしれないという理由であまり物見遊山に歩かない方がいいだろう。




飛田新地のあるあいりん地区は大阪指折りのドヤ街で一帯には1000円で宿泊できるホテルが並ぶ。

(ドヤとは「宿」と呼ぶには程遠いレベルの宿泊所のことだが近年はバックパッカーの利用も増えているらしい)

遊郭街から西へ移動するとよく警察24時に登場する要塞然とした西成警察署や、

絶対に行ってはいけないといわれる三角公園などがある。

夜にこの辺りに来ると浮浪者や路上で酒盛りをしているおっさんをちらほらと見る。

道路の真ん中でうろうろしている人の横切ると「あるで~、あるで~」という独り言をいわれ、

ああ、お薬の行商の方ですかというMRも真っ青な深夜営業と気づく。

三角公園ではもう少しおおっぴらな形でクスリと路上賭博が見られるらしいが、

あまり身綺麗ななりをしているとかえって目立つらしいのでやめたほうがいいそうな。