恋慕の情

きのう喫茶店にいったら隣にいた若干オタクっぽい大学生?の男二人がガンダムトークしてた。

A「ガンダムで結婚したいキャラといえば、ディアナ・ソレルとかいいな。」

B「いや最近のはあかん」

A「昔のでいうとハマーン・カーンとか一番ありえないパターンやけどな」

B「貴様、ハマーン様とよべ、ハマーン『様』と」

っというところでB氏に共感してしまった。

実は「この下郎が!ハマーン様を呼び捨てにするとは何事か」と内心思っていたからだ。

「『昔』とは笑止。われわれの恋慕の情に今昔のゆらぎなし!」

とB氏と並んでAに檄を飛ばしてやりたかった。

ちなみにハマーンイメージ 1・カーンというのはZガンダムという名作品の敵方ドS女王様キャラで、

20歳そこそこでアクシズという軍団の長になり、

みんな偽名だと知りつつ「クワトロさん」と空気読んでるところで「シャア」と呼びかけてしまう破壊力の持ち主で、

最終回のクワトロ・シロッコハマーンの三つ巴戦をなぜか2対1に持ち込みシャアを倒そうとするIQの高さを発揮するが、

続編のZZガンダムというギャグアニメの終盤では自ら小惑星モビルスーツごと激突して散るという、

いまいちファンが首肯しかねる最期を遂げている。

アメリカの学者(ちなみに男)からとった名前らしいが、

「そこら辺にいなさそうなネーミング」をあえて採用しているのはガンダムの暗黙の掟(ルール)である。

アムロ・レイとかね。

(ファーストのとき富野監督は沖縄に安室という名字があることは知らなかったらしい、ふふ)





ガンダムの中で極めて個性が立っているだけにコスプレ難易度が高いキャラクターの筆頭にある。

外見だけ真似しただけでは決してハマーン様は三次元に降臨しない。

ピンク色のボブヘアにスレンダーな長身を持ちあわせただけではだめなんだ。

20歳そこそこでアクシズの総裁になったドSの女の人じゃなきゃだめ。

つまりは、二次元オンリーでしか存在しない無茶ぶりなところがいいのである。

っというわけで、

ここさいきんのロボットアニメは、どこにでもありそうな内面の描写が多いせいか、

むしろ感情移入できないって話なんだけどね。

(単にオレがおっさんになったからだけど)

戦争ばかりしてる二十歳(はたち)の女より

恋愛とか仲間割れとかを繰り返すキャンパスライフを送っている成人前の娘を描くのがオツなのだろうか。

仲間割れしたとか寝取られたからといって相手を毒殺したり、

コロニーレーザーで焼き殺したりするわけではないし、

地に足がついた感じの密室劇風なのがちょっとおもろない。

恋愛要素ってロボットアニメの世界でそんなに重要?

ほのぼの戦争アニメで、どのキャラにも恋愛の相手がおり、一人は死に一人は生き、

とある恋人たちは心中したったぜみたいな展開があってかーらーの、

ラスボス倒した後に主人公とヒロインは祝合体、はい終了。

という潮流がどうもある気がする。

視聴者がキャラクターに恋をするのが一番いいと思うんだけど、

三次元のわれわれはまさに蚊帳の外、みたいな!(まあ普通そうなんだけど)

「あいつは処女」みたいな可愛さをたたえた女キャラの死とかあるけども、

みんなハマーン様が処女だったかどうかなんて考えたことすらないでしょ?

いや、むしろ考えたくない。

でもそこから何のハプニング的な恋愛すらないハマーン・カーンがわれわれの琴線に触れるのが、

二次元の不思議なのである。




この脱領域なところが一世代・二世代前のアニメの魅力だが、

どうも超時空要塞マクロスで「貴様は未沙派かミンメイ派か?」と問う要素が出てきたあたりから、

アニメのキャラクターが「どう、この娘可愛いでしょ?」っという感じに変容してきた気がする。

ミンメイはあの人の事情をまったく考慮しないだだっ子ぷりがむかつくとか、

未沙はおとなしく恋愛を静観する中での我慢っぷりがたまらんとか、

別に視聴者に媚びを売ってるわけでもないのにキャラに恋慕あるいは横恋慕するところは奇怪である。

そして、そうした会話が三次元でガチでなされる気持ち悪さにオタク同士なんの疑問も抱かず、

趣を介さない非オタたちがそこから一歩離れたところでオタたちを白眼視するところで、

オタク文化は完結していた。




それが、ランカ派かシェリル派か?という現在の文脈まで通じているわけだが、

しかしここでどっちか選べといわれても、は?という感じなのだ。

そもそも、キラ☆、って何?、と返してしまう。

メディア・アピール済みの声優を起用し、

あるいは女の子女の子した美キャラが降臨し、

あるいは爽健美茶のおまけにキーホルダーをねじこみ、

あるいは三次元のビジュアルも持ちあわせた眉目秀麗な声優の話題が2chを席捲し、

カラオケでアニソンを歌ってしまうことの気まずさを最大限打ち消したアニソンの波が来て、

気づけばそうしなければ生き残れない業界となる。

たぶんオールドタイプのオレが感情移入できない理由がそのへんにある。

恋愛なし、女っ気無し、ピンクのボブのハマーン様に信者がいる不思議に、

ちょっとは学ぶものがあるはずだぜ。