駄本

現在蔵書整理中につき、身辺多忙なり。

京に越すはどれほどのことか、と侮るも、その実は易きことにはあらず。

押入れの中からは蟲のように本がつぎつぎとわいて出る。

大抵は目を通すにも値しない駄本にて候。

そのくだらなきものの際限なく湧出するが如きは蟲の行列をおもわせ候。

中世にありて現代になきもののひとつは焚書なり。

火を奪われた人間の知性はいまやいたずらな駄本の氾濫を防ぐ不レ能、

生命を賭して反権力の書を世に広めた先人たちの羨望と慨歎を惹起する。