事典

百科事典を買う。

古本であるために、なかなか汚い。

年鑑(1968年)が付録としてついているのだが、

これが水濡れのためにせっかくの革の背表紙がふにゃふにゃである。

その他の巻も表面がややべたべたしている。

このべたべたは何なのであろうか。

もしかして……こ、これはまさか。

といいつつ、実際のところ何の検討もつかない粘着質なのである。




いずれにせよセットで8000円とはお買い得である。

40年余り昔のものであるから百科事典としてはあまり役に立たないかもしれない。

だが事典がつむぎだす時代は現代のみにあらずして、歴史教科書としても役立つのである。

しかも表面に似合わず、中身はとても真新しい。

むしろ読まれた形跡すらないのである。

おそらく長年倉庫で多少の水気にさらされながら眠っていたものが、古本屋に流れてきたのだろう。

もしかしたらそのまま捨てられていたかもしれない。

そうであるなら非常にかわいそうなことであった。

いうなれば、年をへし捨て子を拾う心地かな。

私は今はそのようにして40年の封印を紐解いている。