ビターを超えたチョコレート

最近はにわかにカカオブームらしい。

わたしが勝手にそう思っているふしもあるが、

東京新聞の日曜版にも特集が組まれていたから、あながち間違いではない。

それによるとカカオはその昔(千年以上も前だよ)に、精力剤として使われていた由。

それはとても苦く、現在のような甘くも苦いイメージとはかけ離れたものだった。

もちろん疲れを癒す効果は当時からあり、むしろ漢方のようなものとして重宝されていたようである。

良薬は口に苦く、精力剤もしかり。

そして現代のようにチョコレートの中にカカオが含まれるようになったのは、

17世紀のイギリスが始まりだそうだ。

その当時はまだ、液体状にしたチョコレートにカカオを混ぜたものをカフェで提供していた。

嗜好品のおもむきが出てきた頃のカカオであり、これはなかなかおいしそうである。




しかし、もちろんカカオそのものはとてつもなく苦い。

なぜ上記のような陳腐なトリビアを提供したかというと、

最近のカカオ熱に乗じたチョコを購入していささか後悔したからである。

当のチョコレートは、カカオが原材料のほぼ100%(正確には99%)を占めている一品である。

これが強烈に苦い。

新聞の特集記事を見てカカオに一定の関心を示していたところで、

たまたま近所のスーパーでカカオを多量に包含したそのチョコを発見したのだ。

しかしパッケージに明記されている、「!非常に苦いチョコレートです」を不覚にも見落としていた。

わざわざ丁寧に「!」マークまで文頭に付与されているのに。

それもこれも、特集記事を読んだ頭の隅で、

カカオは徐々に食べやすい形で消費されるようになった、という歴史的変遷を覚えていたからであった。

「私は悪くない」、という弁明のように聞こえるかもしれないが、その通りである。

チョコレートなのにまったく甘くないのだ。

きっと甘いものが大好きなおさな子に、「これがチョコレートなのよ」といって食べさせたら、

もう二度とその子どもはチョコレートを所望しないであろうことが確実なくらい、苦い。

もしかしたらこのチョコは、そんな食育のために開発されたのかもしれない。

これは様々な憶測を生み出す苦さである。




普通のチョコの二倍の値段を出して買ったこの商品。

あまりに食指も動かないので、消費するのにも普段の二倍、いや、通常の三倍の時間を要するであろう。

これこそビターを超えた、ウルトラビターのチョコレートである。

はっきりいって、おすすめしない。































しかし、これはもしかして精力剤としての裏効果があるものなのか……

うーむ。