二度目の正直

今夜はアムネスティーで一緒にインターンを戦い抜いた友と、再開する。

久しぶりの再開、湧き起こる昔日の過酷さと懐かしさ、互いの近況、盛り上がりには事欠かない。

新宿でとんかつを食べた後、ひととき街中を歩きキリンシティに入る。

私がよく行くビアホールだ。

breweryの直営店だけあってビールは美味い。

(去年の11月から一般に発売されているブラウマイスターは、以前はこの店でしか飲むことが出来なかった。いまではどこでも見られるようになってしまったビールは、その魅力をただ薄めるのみである。限られた場所でしか飲むことができないから、プレミアムビールであると思うのだが。)

私は最初の一杯はいつものようにブラウマイスターを、

そして二杯目にラガービールを頼んだ。

そこで店員の女性が威勢よく言う、「いまはキャンペーン中なのでラガービールを頼むと、くじが一本ひけます!!」。

その女性はまたかっぷくもよく、居酒屋にまさに活気を与えるようなおおらかさを放つ。

わたしは差し出されたくじを受け取る。

小さなドレッシングボトルにくじの棒をつめこんだ、急ごしらえのくじびき。

それを逆さまにすると色つきの棒が出てくる仕掛けだ。

緑ならはずれ。

赤なら当たり。




私はその即席のくじ引きを、まず入念に、しゃかしゃかと振る。

それで当たりが左右されるはずもないことを知りつつ。

そして、えい、っと思い切りよくそれを逆さにする。

だがその勢いも無関係に、棒はボトルの先端からほんのわずかだけ顔を出した。

緑だ。

はずれ、である。

すでに一杯飲んだ酔いのためか、

それほどの落胆も覚えず、私と友はまた飲み始めた。




しかし杯を重ねるうちに、無性にあのくじのことが気になり始める。

もう一杯たのんでみようか。

再びかっぷくのよい女性を呼びとめ、ラガービールを注文する。

「さあ、こんどこそ!!」。

女性は相変わらずの威勢のよさで、同じくじ引きのボトルを差し出す。

私はもう一度くじをシャッフルする。

今度は控えめに。

そしてボトルを手の中で逆さまにする。

今度飛び出す棒にも勢いがない。

緑色だ。

私は言う、

「もう一度やってもいいかい?」。

ルール違反だとわかっていても、悪酔いの調子がその認識を制する。

「う~ん……」。

わずかにためらいを見せる女性の顔。

「じゃあ、もう一度だけ」。

周りの客に目配せしてから、女性は、今度はあえて静かに、返事をした。

言った矢先から、なんとなく申し訳ない気持ちが私を襲う。

そして二度目のやり直しでは、すばやくボトルを逆さまにする。

もう、シャッフルはしない。

すとんっ。

棒は相変わらずの勢いのなさで、ボトルから顔を出した。

色は赤だった。