平和ボケ、いや災害ボケか

2004年12月のスマトラ沖地震

その津波は間接的にスウェーデンを襲った

もちろんスウェーデンと南アジアの諸国は地理的にはとても離れている

しかしスウェーデン人にとって、そこは日本人のハワイのようなものであった

あの冬の時期、彼らにとってそこは絶好の避寒地

地震に伴う津波で約500人のスウェーデン人が犠牲になったと言われている

現在でもスウェーデン国内では政府の初期対応の遅さや、

災害対策本部を設けなかったこと、

そして災害対応の責任者が不明瞭だったことに対する批判がある

地震への対応を咎め、辞職した閣僚は一人もいない

そして一年たった今でも災害時の政府の指針は決められていない

アジアで起きた大地震の余波は未だにスウェーデンを襲っているのだ






このスウェーデン政府の手際の悪さはなぜ起きるのか

なぜならそれはスウェーデン人が天災に慣れていないからである

スウェーデンでは地震も台風もない

日本人が日本で1年のうちに大方経験する災害がスウェーデンではほとんどないのである

地震が起きない国で地震が起きたときの対応について議論しようとしても、

現実味が沸かないのである

Tsunamiという単語はスウェーデン人にも通じる

しかしそれは彼らにとって身近なものではない

誰でも目の前にあるものについての議論にもっとも力が入る

例えば東京に住んでいるのに、

冬の気温が氷点下25度になったときに着る服を用意している人がいるのか

それはストックホルムでは起こりえる

だからこそストックホルムの人々は分厚いコートとニット帽を持っている

反対にスウェーデン人に日本の憲法九条を議論することができるか

そもそも憲法九条のような条項があることすら誰も知らない

しかし日本人にとってはそれは国防をめぐる最重要の議題である

大切なことは常に身近に危機感を感じていられるかということだ






そういう意味ではスウェーデン政府が対応に不慣れだったというのは仕方のないことである

それは、誰が総理大臣だったから、誰が外務大臣だったから起きた、ということではない

スウェーデン人全体のこの天災への危機感のなさがそうさせたのである

皮肉なことは日本人が平和ボケと言われる一方で、地震研究は世界一進んでいるということだろう

日本人には地震に対する恐れがある

台風にも苦しめられる

だからそれと闘おうとする

スウェーデン人にはそれがない

それが災害ボケなのだ