ラトビアでのボランティア(3)

私と同じグループを組んだルーマニアの女性は、とても知的な人であった

まだ19歳にもかかわらず、英語に堪能で博学である

政治学を勉強しているということもあって、私によく日本の政治について質問してきた

日本は立憲君主制だ、というとかなり驚いていた

どうやらEmperor(皇帝)がいる、ということが意外だったようだ

彼女のスマートで勤勉なところは、誰もが認めていた



繰り返すが、彼女はルーマニア出身である

ドラキュラや体操選手のコマネチの国といえば、身近に感じる人はいるだろう

しかしこの国は、かつて共産主義国であった

彼女は共産主義を憎んでいた

お金がなかったからではない

彼女たちは共産時代もお金は持っていた

しかしそれで買える物が何もなかったからだ

配給センターに朝4時に並んで3時間待ち、手に入るのが牛乳だけだった

一家に一週間に与えられる卵の数まで決まっていた

彼女はそんな思いはもうしたくないのだと、折々私に言った

将来は政治家になりたいと語った彼女は、国を憂いている人間の一人でもあった




もう一人のベルギー人女性は、子供たちが好きだという気持ちは、誰よりも強かっただろう

常に子供たちとする遊びについて、彼女なりに提案した

その熱意とアイディアは感嘆するものだった

しかし問題もある

彼女は自分の意見を妥協させないのだ

私が子供たちを野球をすることを提案したら、ルールについて意見をするのである

意見するのはかまわない

しかしそれは、ベースを8個にするとか、野球とは違うスポーツをやるというものだった

私がそれを拒否すると、彼女はいじけたように、誰にも聞こえないくらい小さい声でブツブツ文句を言う

誰に対してもその態度なのである

そしてなにか英語で話しかけると分からない顔をすることが多々あった

彼女が英語力に乏しいことは誰の目にも明らかであった

そして彼女は自分が誰よりも美人とか、一番肌が綺麗と言った

それは事実とは大きく違うのである

それらのことは誰にも好かれなかった

残念ながら彼女の存在が、ボランティアメンバーの中に亀裂を生じさせる第一の原因だった

-続く-