ビギナーズ

さいきん道場に弓始めの人が数人入ってきた。

道場の顔ぶれが固定されているなかで数人もニューフェイスが入ってくるのは非常に珍しい由。

ところが、なぜか俺が指導員を任されている。

「大丈夫だよ。君なら、若い子と波長合いそうだし~」

たしかにみんな一九歳、しかも全部女子。

弐段のおれに無茶ぶりすぎない?

こういうときこそ上の段から詰めていこうぜ。

指導中のボディータッチは最近ものすごいデリケートな話題なんでしょ?

「やりたかないです」

「ええやん、君好みの若い子やぞー」

青臭いむすめっこに興味なんかあるかいな。

無駄にきゃっきゃしてるし、えらい神経使う。

とりあえず、弓の素引きから始める。

加えて、弦輪の作り方、弦張りの仕方、矢尺・引尺の説明、etc。

「いきなりそこ?」という声も聞こえてきたが、

道具・規矩の決め方を知らないと成長しません。

特製カリキュラムで急成長してもらいます。

ところが弱い弓が足りない、さすがに最初から一四キロの素引きはちときついか。

「あー、俺君忙しそうだね」、と遠くから眺める先輩。

なぜか俺だけ孤立し忙殺されている気がする。

きっとせわしない星の下に生まれているんだと最近実感しつつある。




しっかし、久しぶり初心者を見ることになったわけだが、

面白いもので得手不得手は最初からある程度はっきり見える。

素引きしても、弓の力をさばくのが上手な子、肩でもろに受けてあっぷあっぷする子、

両肘が下がりすぎて矢を番えたらきっと胸割りくらいになる子、

これだけの個人差は単純に運動神経の善し悪しだけでは説明できないと思う。

弓の素質というのは確かにあると思う。

そして、上手くなるにはひたすら反復して貰う必要があるわけだが、

週一回しか練習時間ないんじゃあ、いつ的前稽古にうつれるかわからない。

とりあえず徒手空拳で型を反復してきてね。

あとは稽古回数増やす!

みっちり指導する!

試合で優勝さす!

はっ。

=俺忙殺される。

これか!

中途半端にケアしたくないし、指導するというのはその人に通時的な責任を負うということ。

途中で投げ出したくても教え、憎たらしくても寛恕し、見守り続けなくてならない。

やってみてるさ。

そういう星のもとに生まれとるだな。