和帽子エッセイ

また弓道の話。

私がつかっているユガケは和帽子と堅帽子である。

さいきん堅帽子を買ってみた。

使用するのは九年ぶりだが、三日で慣れた。




さいきんよく行く道場で弓道教室が開かれている。

初心の者に堅帽子をつかわせて大の字離れである。

ジュラルミンの矢がどこかにぶつかる金属音がする。

ガチャン。




私が弓を始めた頃堅帽子でも和帽子でもなく軍手で練習したのがなつかしい。

軍手、とっていも、騎射かけではなく、ドカタで使うような軍手である。

親指に握り皮を輪っかにしたものを巻いて使う。

それでも的前でひける。四分ほどの弓ならそれで十分である。




私がOBとして母校の弓道部をたずねたとき、

初心の生徒にはかわらず和帽子を使用させていた。

だがよくみると帽子が真っ黒になっている、

ギリ粉をつけていたのだ。

和帽子にギリ粉を使用すると帽子が固くなり、

継続すると粉が癒着したカケの革がボロボロとくずれ落ちる。

現在の指導者は称号者である。




弓の知識は比較的源泉が限られているため、結果、

自分が触れる人・弓書の範囲で吸収するにまかされる。

そのため、自分が初心を迎える環境により弓の成長は左右される。




和帽子にはギリ粉は使用できない。

そのため目の粗い革をすべりどめのため帽子に接着することがある。

さいきん私の柔らかガケも肘力のときにずるっとすべる。

とりかけの位置を変えてみようか、

それでもだめなら大唐で補強できるだろうか。




かけの根幹にあるのが、

和帽子と堅帽子で的中は変移するか、ということだ。

射手によって違うだろう。

私の場合、的中はかわらないか、堅帽子はよくあたる。

ただし、和帽子をつかうと、

的の九時から十一時のあたりに矢が抜けることがよくある。

とくに和帽子では、この傾向が顕著に出る。

わたしにとっては和帽子の方が上級者用のかけである。

このカケで九割的中できれば、堅帽子で抜く気がしない。

堅帽子は機械のようなものだから。