政治家の恐れるもの

長野市長が射殺される。

この事件をうけて、「暴力でもって言論を弾圧してはならない」とか、

「政治は凶弾に屈してはならない」という意見表明が国政議員からもなされている。

これは形式的な文句では決してない。

政治家にとってこれは本当に衝撃なのである。

彼らが恐れる最大のもの、それは暴力である。

当たり前のことと思うなかれ。

政治家が築きあげてきたもの、人脈、金脈、キャリア、等々。

それらが暴力によってして、一瞬に無に帰してしまう。

いくら立法行為で組織犯罪を取り締まったとしても、

銃によって体を打ち抜かれてしまえば彼らの人生はそこでお終いなのである。

政治が一番弱いものが暴力であり、政治は常にその恐怖と表裏一体なのだ。




犬養毅が凶弾に打ち抜かれる前の一言は、「話せば分かる」である。

このなにげない一言が歴史上に強い印象をもって残されているのは、

まさに話しても通じない暴力の時代の到来がその一言によって予告されたからである。

武断政治はすでに正常な状態の政治にはないのだ。




政治は暴力に弱い。

だから政治家にとってはこのような事件は衝撃的なのである。