映画評

文章表現法の授業を二週連続でサボったら先生に怒られてしまった。

いや、私もいろいろな浮世の煩わしさにうんざりしているのよ。

とにかく、明日までに映画評と書評をかかにゃならぬ。

とりあえず映画評は『紳士協定』。

いつもこれについてばっかり書いている気もする。

しかしそのくらいしか映画を知らないのだ。

でもそれについてなら何でもかける。

そういう物事に狭く深いタイプの人間を、英語では”introvert”というらしい。

「内向的な」って意味だけではないのだ。

っと自分を正当化してみる。


以下↓映画評


『紳士協定』 1947年アメリカ 監督 エリア・カザン 主演 グレゴリー・ペック

 「古き良き時代(good old days)」と呼ばれた往年のハリウッド映画を語るとき、この映画を除外す

ることはできない。当時、まだ「反ユダヤ主義」という言葉がアメリカ社会に深く根付いているときに、

あえてその人種問題にフォーカスをあてた社会派の作品がこの『紳士協定』である。グレゴリー・ペック

扮する主人公の新聞記者フィリップ・グリーンは、あるとき反ユダヤ主義の取材を知人から依頼される。

その取材方法を入念に考えたフィリップは、自分自身をユダヤ人だといつわることを思いつく。しかしそ

れがきっかけとなり、彼は徐々にユダヤ人というだけで差別を受ける、アメリカ社会のきびしい現実を体

験するようになる。ユダヤ人と分かると態度を豹変させる人々、ユダヤ人の宿泊を断るホテル、そして就

職差別。反ユダヤ主義のみならず、人種問題の全体像を精妙に描写するさまざまな要素が作品には盛り込

まれている。

 当初、映画の製作に当たってはユダヤ人側から中止を要請されたという。紳士協定とは、社会問題を黙

認する「暗黙の了解」という意味である。ユダヤ人にとってもアメリカ社会にとっても、反ユダヤ主義

触れてほしくない腫れ物であった。そういった紆余曲折を経て公開された本作品はその鮮烈な問題提起で

見るものに衝撃をあたえ、1947年度のアカデミー賞で作品・監督・助演女優の三部門に輝く。監督賞を

受賞したのは、後に『欲望という名の列車』、『エデンの東』なども手がけたエリア・カザン。助演女優

賞に選ばれたのは、華やかなヒロインの傍らで、主人公へ静かに恋心を抱く女性を熱演したセレスト・ホ

ームである。製作からすでに60年余りの時間を経ても、この作品は社会の闇を攻撃する前衛的な魅力に

あふれ、古めかしさを感じさせない。白黒のシーンのなかに垣間見えるのは、古き良き時代の心意気と人

間の良心である。